東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が辞任し、新会長を選ぶ候補者検討委員会が設置された。2月16、17日には会合を開催。世界中の女性を敵に回し東京五輪のイメージをダウンさせた森前会長の後任として、五輪開催まであと5か月となったこの時期に選ばれる新会長はまさに「火中の栗を拾う」役目となる。
検討員会は新会長に求められる資質について5つの観点を発表。要約すると➀五輪・パラリンピック、スポーツに対する深い造詣がある➁男女平等など五輪憲章や東京大会の理念を実現し、それを将来にレガシーとしてつなげていける③国際的な活動経験があり国際的な知名度や国際感覚がある➃東京大会のこれまでの経緯や準備状況について理解している➄組織運営能力や多様な関係者の調和を図る調整力を備えている、だそうだ。
ここまで、名前が挙がった新会長候補をトレーディングカードでそろえてみた。
もっとも有力とされてきたのが橋本聖子五輪相。スピードスケートと自転車競技で6度、出場した「五輪の申し子」は92年のアルベールビル五輪で銅メダルを獲得した。五輪相としてここまでの経緯も把握し、バッハIOC会長とも太いパイプがある。ただし、新会長に就任した場合、代わりの五輪相を選ばなければいけない、という次のステップが待っている。17日の会合で一本化され、就任要請を受けた、という報道もある。
橋本聖子五輪相
対抗馬は小谷実可子さんだ。組織委員会のスポーツディレクターを務めており1988年のソウル五輪ではシンクロナイズド・スイミングでソロ、デュエットの銅メダリストとなった。五輪招致に尽力し、語学も堪能。「女性」「若さ」というキーワードに当てはまるが、組織運営能力は未知数なのではないだろうか。
小谷実可子組織委員会SD
山下泰裕JOC（日本オリンピック委員会）会長の兼任案も出ている。「日本柔道界最強の男」と呼ばれ、1984年のロサンゼルス五輪では無差別級で金メダルに輝いた。ただし、森前会長の舌禍事件が起きた時にその場にいながら、戒められなかったのは印象が悪い。
山下泰裕JOC会長
他には前スポーツ庁長官の鈴木大地氏は1988年のソウル五輪100メートル背泳ぎの金メダリスト、現スポーツ庁長官の室伏広治氏はハンマー投げで2004年アテネ五輪で金、12年のロンドン五輪で銅メダルを勝ち取った。
鈴木大地前スポーツ庁長官
室伏広治スポーツ庁長官
メダリストではないが、忘れていけない存在が前内閣総理大臣の安部晋三氏。2016年のリオデジャネイロ五輪の閉会式での引継ぎセレモニーでマリオに変身した姿はこの時のためだったのではないだろうか、と疑いたくなるほどだ。敵を倒して、ピーチ姫ならぬ組織委員会を救うかもしれない。
安部晋三前首相
もう無理だろうが、川淵三郎氏が後任として森前会長に指名された時「森さん、最後にいい仕事したね」と思った。サッカーJリーグの初代チェアマン、日本サッカー協会（JFA）会長として知られるが、日本のバスケット界を組織改革しBリーグを創設した組織運営能力はすごい。サッカー日本代表にも招集されたバリバリのスポーツマンだった。男気を見せて会長職を引き継いだはずが、ちょっとだけ順番が違っただけで、辞退せざるをえなくなった。川淵さんなら、逆風を跳ね返して東京五輪を開催しただろう。本当に惜しかった。
川淵三郎五輪選手村村長
組織委員会の理事の中に、ボクが推す人物がいる。「世界のホームランキング」王貞治さんである。2016年に五輪3大会ぶりに復活する野球・ソフトボール界を代表する立場として理事に就任した。現在は福岡ソフトバンクホークスの球団会長を務めるが、ここは日本のため、ひと肌脱いでいただくのはいかがだろう。今年、80歳を迎えるが、王さんは年齢さえ超越した存在なのだ。王さんが新会長になっても、文句を言う人はいないはず。大逆転ホームランをかっ飛ばして欲しい、と夢を思い描くのはボクだけではないはずだ。
王貞治組織委員会理事
Cove【ライター】
国内外のベースボールカードやコレクションを収集し続けて30年。元スポーツ紙ライター。保護猫の姉妹を引き取り在宅ワーク中。
