今年もNFLが帰ってきます。毎年思うのですが、オフシーズンは本当に短いですね。各チームがトレーニングキャンプに入り、日本時間の8月7日(金)午前9時からはアリゾナ・カージナルスとカロライナ・パンサーズによる伝統の試合「ホール・オブ・フェイムゲーム」が開催されます。
ホール・オブ・フェイムゲームは、プロフットボール殿堂入りが決まった選手のセレモニーに合わせて開催されるエキシビションゲームで、NFLのプレシーズン開幕を告げる毎年恒例の試合です。舞台は、プロフットボール殿堂があるオハイオ州・カントン。今年はカージナルス一筋でプレーした伝説のWRラリー・フィッツジェラルドと、パンサーズの守備を支えたLBルーク・キークリーが殿堂入りするため、このカードが組まれました。

この試合に出場する2チームは、他のチームより1試合多い4試合のプレシーズンを戦うことになります。そのため、主力選手の出場時間は短くなったりほとんどゼロのことも多く、勝敗以上に注目したいのが、ルーキーやロースター入りを争う若手選手たちです。1プレーがそのまま人生を変える可能性があるNFLにおいては、レギュラーシーズンとはまた違った緊張感があります。
正直なところ、昨季の2チームはリーグ全体で見ればかなり地味な存在でした。カージナルスは3勝14敗。パンサーズは8勝9敗ながらもNFC南地区を制してプレーオフへ進出しましたが、ワイルドカードでロサンゼルス・ラムズに31対34で敗れています。どちらも全米中から注目を集めるチームとは言いにくいシーズンでした。ただし、今オフは両チームとも大きく動いています。カージナルスはジョナサン・ギャノンHCを解任し、ラムズで攻撃コーディネーターを務めていたマイク・ラフルアーを新HCに招聘。さらに、2019年のドラフト全体1位から7年間チームの顔だったQBカイラー・マレーを放出しました。
新しいQB陣は、昨季1勝11敗のジャコビー・ブリセット、新加入のガードナー・ミンシュー、ドラフト3巡指名のカーソン・ベックが中心です。そしてドラフト全体3位では、RBジェレマイア・ラブを指名。チームの方向性を大きく切り替えたオフになりました。QBがどうしても弱く見えますが、RB・WR・TEは強力。ハマれば多少は勝てそうなメンバーです。
一方のパンサーズは、昨季のチームを土台に、さらに上を狙う補強を進めました。FAではEDGEのジェイラン・フィリップスとLBのデビン・ロイドを獲得。ドラフトでは1巡でOTモンロー・フリーリング、2巡でDTリー・ハンターを指名し、オフェンスラインとディフェンスラインの両方に若い戦力を加えています。派手さよりも、チームの弱点を着実に埋めるオフだったと言えるでしょう。
今回は、ホールオブフェイムゲームに出場する2チームから、今シーズン注目したい5人の選手と、プレシーズンで見るのが楽しみな二人の新人選手を紹介します。
マービン・ハリソン・ジュニア/Marvin Harrison Jr|WR カージナルス

2024年ドラフトで全体4位指名された、カージナルスの若きエース候補です。父親はコルツの伝説的WRで、すでに殿堂入りしているマービン・ハリソン。なのですが、シーズン前から「仕上がっているのか?」「体重が重すぎないか?」という不穏な空気が漂っています。
ルーキーイヤーは62キャッチ・885ヤード・8TDとまずまずの成績でしたが、2025年は怪我が重なり、12試合で41キャッチ・608ヤード・4TDにとどまりました。QBもシステムも変わる今季は、大学時代から期待されてきた本来の姿を見せられるかが最大の注目です。大学時代の動きを考えると、1,000ヤードは通過点。もし、今季活躍できなかったらバストの烙印も押されかねない状況です。ちなみにトレカ的には値段はいまだつくものの、サインが適当なところがあり、あまりワクワクしません。
ジェレマイア・ラブ/Jeremiyah Love|RB・カージナルス

この連載では大学時代から何度も紹介してきた選手です。ノートルダム大学では、1,372ヤード・18TD、さらに27キャッチ・280ヤード・3TDを挙げ、ハイズマン賞でも最終候補に残りました。近年では、RBをドラフト全体3位という高順位で指名するのはかなり珍しく、それだけカージナルスの評価が高かったということです。トップスピードだけでなく、タックルを外すバランス、ブロッカーの後ろで走るコースを待てる落ち着き、レシーバーとしての能力も一級品。プレシーズンでどこまで出場するかは分かりませんが、ボールを持つたびに何かが起きそうなルーキーです。NFLでトップRBになれる素質を持っています。
マイケル・ウィルソン/Michael Wilson|WR・カージナルス

個人的に大学時代からずっと高く評価してきたWRです。2023年のシニアボウルでは、1対1のドリルで鋭いルートランと競り合いの強さを披露し、練習期間を通して最も評価を上げた選手のひとりになりました。しかしドラフトはスピードの遅さもあってか、3巡指名。
NFL最初の2年間はともに500ヤード台でしたが、昨季ついにブレイク。78キャッチ・1,006ヤード・7TDを記録し、カージナルスで最も安定したWRに成長しました。身長188cm・体重97kgのしっかりした体格があり、ミドルレンジでのルートランとコンテステッドキャッチが魅力です。マービン・ハリソン・ジュニアより知名度は低いものの、今季もQBにとって最も頼れるターゲットになる可能性があり、2年連続の1,000ヤードも夢ではありません。
ブライス・ヤング/Bryce Young|QB・パンサーズ

2023年のドラフト全体1位QBです。ルーキーイヤーは2勝14敗と苦しみ、2年目の2024年には一度先発を外されました。この時点で「バストではないか」という声もかなり増えましたが、先発復帰後から少しずつ本来の落ち着きを取り戻しています。
2025年は自己最高となるパス3,011ヤード・23TD・11INTを記録し、6度のゲームウイニングドライブでチームを地区優勝へ導きました。圧倒的な数字ではありませんが、接戦の終盤で見せる判断力と勝負強さは本物です。今オフは新しいCのルーク・フォートナー、1巡OTのフリーリングも加わりました。4年目の今季、将来を託せるフランチャイズQBであることを証明できるか注目です。
デリック・ブラウン/Derrick Brown|DT・パンサーズ

パンサーズのディフェンスの中心にいる大型DTです。2023年にはDLとしては脅威的な103タックルを記録し、プロボウルに選出。しかし2024年には開幕戦で膝を負傷し、そのままシーズン終了となりました。
復帰した昨季は全17試合に先発し、73タックル・自己最多となる5サック・7パスディフェンスを記録。その活躍によりパンサーズの守備は、被獲得ヤードスタッツがリーグ最下位から16位まで改善しました。193cm・145kgという巨体でダブルチームを受け止めながら、パスラッシュでも数字を残せる貴重な存在です。今季は隣にルーキーのリー・ハンターも加わり、さらに動きやすくなる可能性があります。
さらに、ここからは、ホールオブフェイムゲームで特に見てみたい新人を2人紹介します。
レジー・バージル/Reggie Virgil|WR・カージナルス

ドラフト5巡143位で指名された大型WRです。マイアミ大学(オハイオ州)でブレイクした後、最終学年にテキサス工科大学へ転校。2025年は57キャッチ・705ヤード・6TDに加え、2回のランをどちらもTDにつなげました。シニアボウルでも滑らかなルートランと動きの切り返しが目立ち、評価を上げています。
パスキャッチ陣にはハリソン、ウィルソン、トレイ・マクブライドという強力なターゲットがいるため、すぐに多くのパスが回ってくるとは限りません。それでも、191cmのサイズとキャッチ後の動きは魅力的で、ウィルソン的なプレーが期待されます。プレシーズンで結果を残せば、4番手以降のWR争いから一気に出場機会をつかめるかもしれません。
リー・ハンター/Lee Hunter|DT・パンサーズ
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— Carolina Panthers (@Panthers) April 25, 2026
パンサーズが2巡49位で指名したDTです。愛称は”The Fridge”。191cm・144kgの大きな体で中央を塞ぐランストッパーで、テキサス工科大学では2025年に41タックル、10.5タックル・フォー・ロス、2.5サックを記録し、オールアメリカンにも選ばれました。
目立つサックを量産するタイプではありませんが、相手OLを押し込み、ランニングレーンを消す仕事は非常にハイレベルです。デリック・ブラウンと並ぶインサイドの重量感は、相手にとってかなり厄介でしょう。プレシーズンでは、NFLのOLを相手に自慢のパワーがどこまで通用するのかを見てみたい選手です。
ホール・オブ・フェイムゲームは、主力同士が戦う試合ではありません。それでも、新しいHCのオフェンスでQBの先行きが不透明なカージナルス、そして昨季の地区優勝からさらに補強を進めたパンサーズの最初の姿を見られる貴重な機会です。新人やロースター入りを狙う若手たちが最初のチャンスをどう生かすのかも含め、ぜひ注目してみてください。あと、純粋にアメフトはどんな試合であっても見ていておもしろいです。
次回は、カレッジフットボールの開幕に合わせて、今季のハイズマン賞予想をガチで行ってみます。お楽しみに!
文:Tamago
国内のNFLファンコミュニティでも一目置かれる存在で、特にカレッジフットボールの知識に関しては「日本随一」との呼び声も高く、毎年恒例となっているドラフトビッグボードでは、数百人に及ぶ選手の評価・分析を行い話題となっている。戦術、選手育成、大学文化に至るまで多角的な視点でフットボールを分析し、その的確さには定評がある。
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