いまや日本人メジャーリーガーの活躍は、MLBでもよく見られる光景となった。
だが、その扉を最初に開いた男の名を、どれほどの人が知っているだろうか。
その名は、村上雅則――通称「マッシー・村上」。
1964年、サンフランシスコ・ジャイアンツのユニフォームに袖を通し、日本人として初めてメジャーリーグのマウンドに立った投手だ。
本書『マッシー 憧れのマウンド』(村瀬拓男・著)は、その知られざる挑戦の軌跡を描いたノンフィクション作品である。
当時はまだ、日本からプロ選手が海を越えてアメリカに渡るという発想すら乏しかった時代。
そんな中、南海ホークスの若き左腕だった村上は、突如ジャイアンツ傘下のマイナー契約を結び渡米。
語学の壁、文化の違い、孤独感、そして日米間の野球ビジネスのギャップに立ち向かい、わずか1年たらずでメジャー昇格を果たした。
1964年9月1日――その日、村上がマウンドに立った瞬間、日本人によるMLB初登板という歴史が刻まれた。
異国の地で夢を信じ、自らの力で道を切り開いたその背中は、やがて野茂英雄、イチロー、そして大谷翔平へと続く道標となっていく。
翌1965年もジャイアンツと契約を結ぶ予定だったが、さまざまな事情により日本球界へと“送還”される。
それでも、村上が残した足跡は、日本人メジャーリーガーの出発点として今なお語り継がれている。
さらに、村上は1965年、Topps社のトレーディングカードにも登場。
「日本人選手として初めてMLB公式カードに登場した人物」として、その名をカードの歴史にも刻んでいる。
そして2025年、MLB開幕戦「MLB TOKYO SERIES」の開催にあわせて行われた特別イベント「MINT Presents TOPPS RIP NIGHT」。
その記念すべき場に、まさに“日本人メジャーリーガーの原点”を体現するレジェンドとして村上雅則が登場した。
イベントにあわせて発売された『TOPPS MLB TOKYO SERIES 2025 SERIES ONE』には、村上の特別仕様カードも封入。
開封イベントで、自らのカードを手に取るその姿は、時代を越えて物語がつながった象徴ともいえるものだった。
アメリカに滞在した期間こそ短かったが、村上の存在はアメリカ球界に確かなインパクトを残した。
海外挑戦がごく限られた時代に、何の支援もなく異文化の中へ飛び込み、自らの力で道を拓いた村上雅則。
この物語は、一人の青年の夢と挑戦の記録であり、スポーツが国境を越える瞬間を描いた歴史書でもある。
日本野球の歴史、MLBへの扉、そして夢をあきらめなかった若者の足跡。
いま改めて、この一冊『マッシー 憧れのマウンド』を手に取り、“マッシー”の偉大な功績に触れてほしい。
文:伊藤 航(株式会社ミント 広報)