ダルビッシュ有投手（サンディエゴ・パドレス）が6月9日、MLB通算100勝をマークした。敵地クアーズ・フィールドでの対コロラド・ロッキーズ戦に先発し、5回1/3イニングを5安打4失点に抑え、今季5勝目で節目の大台に到達した。北海道日本ハムファイターズ時代のNPB93勝と合わせ、日米通算200勝まで7に迫った。

日本のファンにとっては思い出深い球場での快挙でもあった。日本人選手ではMLB通算123勝を記録した野茂英雄投手（ロサンゼルス・ドジャースなど）に続く2人目の100勝。野茂さんと言えば1996年に、高地にあり打球が飛ぶ、このクアーズ・フィールドで史上初のノーヒットノーランを達成した。

打者に有利、投手にとっては変化球が変化しない、と言われる球場で6回途中まで4失点。MLB12年目の経験と熟練の投球で粘った。野茂より1試合早い通算254試合目での達成となった。

試合後のクラブハウスでは、ダルビッシュが音頭を取って、今季、パドレスで恒例になった勝利のパフォーマンスである三三七拍子。その後、洗濯物用のカートに入れられ、シャワー室へ。今度は、新人の初勝利を祝う恒例行事「ビールシャワー」で祝福を受けた。「１勝目のときも、たぶんやっていない。（ビールが冷たくて）すごく寒かったです。でも良かった。感慨深い」と笑った。

2012年にテキサス・レンジャーズへ移籍。ロサンゼルス・ドジャース、シカゴ・カブスを経て、21年にはパドレスに。昨年オフには42歳となる27年までの6年の契約延長を結んだ。15年に右肘手術。新型コロナ禍によるシーズン短縮も経験した。「また大きなけがをすれば投げられなくなる。その意味で野球とパドレスに感謝している。辞めたくなったら辞めます。（その姿勢が）今の自分を支えている」

報道陣に「野茂さんは何勝？」と聞いた後で123勝と知らされ、一瞬、間をおいて「次の100勝を目指します」と答えた。ダルビッシュがジョークで言ったのか、本気で言ったのかはわからない。でも、誰も笑わなかった。決して、不可能ではない数字だから、である。36歳の右腕の言葉は、限りなく頼もしかった。

メモリアルな100勝目はTOPPS社のオンデマンドカード「Topps Now」でカードになった。

さらに、TOPPS社が発売したばかりの「2023 WBC World Baseball Classic Global Stars」に収録されているダルビッシュのカードが人気を集めている。第5回ワールドベースボールクラシック（WBC）の日本代表侍ジャパンに招集されたダルビッシュは日本人メジャーリーガーの中でただひとり、宮崎での合宿初日から参加。後輩に惜しみなく技術、経験を伝えた。「ダルビッシュ・ジャパンと言ってもいいくらい。何十年かたったときに、日本の野球界にとって本当に大きなものになるのは間違いない」と栗山英樹監督も言ったほどだ。

その合宿での写真が使われたダルビッシュのカードは、満開の桜をバックにした投球練習のもの。桜は日本を象徴する樹木。成功を「桜咲く」ということもある。この後の大会で世界一を奪回することを予言するようなカードは美しく、そして、力強さが伝わってくる。

Cove（ライター）
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター（自称）。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。