ロサンゼルス・エンゼルスは8月18日、エンゼル・スタジアムでの対タンパベイ・レイズ戦で今年7月に行われたドラフトで1巡目（全体11位）指名したノーラン・シャヌエル内野手をメジャーに昇格させ「1番・一塁」でスタメンデビューさせた。
フロリダアトランティック大出身のスラッガーは、MLBドラフトでの1位指名から、2週間後にはルーキーリーグでデビュー。傘下マイナーで、計21試合で打率3割7分、1本塁打、15打点を残した。そして、2Aから3Aを経ずに「飛び級」でメジャー昇格を果たした。
試合前の練習中、ベンチで報道陣に囲まれた。「昨夜、このこと（メジャー昇格）を知ったのだが、こんなことが起きるとは思ってもいなかった。母親に電話して伝えたら『私にそんなウソを言うのはやめなさい』と言われたよ」と笑顔で喜びを語った。
打順は「2番・DH」の大谷翔平の前に座り、背負った背番号18は大谷の17に続く。
その母も含めた家族がスタンドで見守る中、7回裏の第4打席で、うれしいメジャー初安打もマークした。大上段に構える堂々とした打撃フォームはドラフト指名から40日しか経っていないことさえ、忘れさせた。
さらに、この試合の9回の守備では無死一、三塁から、遊撃ゴロが併殺となり、さらに本塁を狙った三塁走者を正確な送球で刺す、チームにとって26年ぶりとなるトリプルプレーを完成させた。
ドラフト指名から40日でのメジャーデビューは、1978年にトロント・ブルージェイズがブライアン・ミルナーを指名から17日で昇格させて以来、45年ぶりとなる超スピード記録となった。さらに、このデビュー戦は早速、TOPPS社のオンデマンドカード「Topps Now」でカードに。指名から41日でトレーディングカードになった選手はおそらく、史上最速になる。厳密にいえば、NBAのドラフト指名直後のカードはあるが…。
これまでなら、ドラフト指名契約後に送り込まれるルーキーリーグでのプレーの写真が使用されて、数か月後に発売されるTOPPS「Bowman Draft」でのカード化が最速だった。タイミング的にその次は来年のTOPPS「Bowman」がファーストカードになるのがカード界の常識だった。エンゼルスの大抜擢と、オンデマンドカードの普及というふたつの要素が重なって実現した「事件」ともいえるだろう。
それにしても、今季のエンゼルスの「ドラフト1巡目選手つながり」はすさまじい。ルーキーではザック・ネト内野手は遊撃の定位置を奪い、華麗な守備を披露。バックマンは3Aを飛び級して昇格して初勝利。ジョーディン・アダムス外野手も8月にデビューしたばかりだった。
エンゼルスから2009年に1位指名を受けたランドル・グリチェック外野手、2011年に同じく1位指名を受けたC.J.クロン内野手は、今季のトレード期限寸前にコロラド・ロッキーズから「古巣」に戻ってきた。
フィラデルフィア・フィリーズから全体1位指名を受けたミッキー・モニアック外野手は昨季、エンゼルスに移籍。そして今季、ブレーク。そういえば、大谷翔平投手だって、北海道日本ハムファイターズの1位指名だった。
【エンゼルスのドラフト1巡目選手（2010年以降）】
2010年 ケイレブ・カワート内野手（全体18位） 2015年デビュー
2010年 キャム・ベドロシアン投手（全体29位） 2014年デビュー
2010年 シェビー・クラーク外野手（全体30位） 未昇格、引退
2011年 C.J.クロン内野手（全体17位） 2014年デビュー
2014年 ショーン・ニューカム投手（全体15位） 2017年デビュー（ブレーブス）
2015年 テイラー・ウォード捕手（全体26位） 2018年デビュー
2016年 マット・サイス捕手（全体16位） 2019年デビュー
2017年 ジョー・アデル外野手（全体10位） 2020年デビュー
2018年 ジョーディン・アダムス外野手（全体17位） 2023年デビュー
2019年 ウィル・ウィルソン内野手（全体15位） 未昇格（ジャイアンツ）
2020年 リード・デトマーズ投手（全体10位） 2021年デビュー
2021年 サム・バックマン投手（全体9位） 2023年デビュー
2022年 ザック・ネト内野手（全体13位） 2023年デビュー
2023年 ノーラン・シャヌエル内野手（全体11位）2023年デビュー
まるで、ドラフト1巡目指名選手の最速デビュー記録にこだわっているかのようなエンゼルス。来年のドラフトで指名する選手も今から楽しみになってきた。
Cove（ライター）
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター（自称）。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。
