
松井秀喜さんは少年時代からの夢をかなえ、2003年、読売ジャイアンツからFA宣言して、ニューヨーク・ヤンキースへ移籍した。NPB時代と同じくMLBでも10年間して現役を引退。米国で、制作されたトレーディングカードは2012年の段階で、パラレル版などを含めれば、約1700種と言われている。BBM「スポーツカードマガジン」に寄稿した際には、「およそ1700の記憶」なんて、記事にお洒落な見出しをつけていただいたことを思い出す。

日本の名門球団から米国の名門球団に鳴り物入りで入団した松井への期待は大きかった。それはトレカでも伝わってきた。UPPER DECK社がサインカードの独占契約を締結。1月にニューヨーク市内のホテルで行われた入団会見の様子が同社の様々なブランドから発行された。入団会見後にはメディアに連れ出されて、タイムズスクエアでバットを振る姿を撮影した写真を使ったカードが代表的な1枚になった。

UD社では、日本でもニックネームだった「GOOZILLA(ゴジラ)」をデザインしたインサートカードを作るなど、米国のトレカ界は大盛り上がり。その思いに応えるように、モントリオール・エクスポズとの開幕戦でメジャー初安打、そして、2003年4月8日のヤンキースタジアムでの本拠地デビュー戦でMLB1号本塁打をグランドスラムで決める衝撃のデビューを飾った。入団会見の次に多かったのが、この満塁本塁打のカードだった。

その豪打だけでなく、走塁、守備でも存在感を見せた松井さんのカードは打撃シーンだけでなく、スライディングやグラブ(グローブ)の形にダイカットしたカードなどが作られた。

松井さんのMLBでのハイライトシーンのひとつとして、2009年のフィラデルフィア・フィリーズとのワールドシリーズMVP獲得がある。剛腕ペドロ・マルティネスからヤンキースタジアムにアーチをかけるなど3本塁打を含む、13打数8安打の打率.615、8打点で日本人初の栄冠を手にした。試合後にMVPのトロフィーを掲げる姿もカードになった。

実はこの2009年は米国のトレカ史に残る「事件」が起き、松井さんのトレカにとってもエポックメーキングな年になった。TOPPS社がMLBとトレカ制作・販売に関する独占契約を締結し、UD社はこの年のシーズン途中、「シリーズ2」の制作を断念し、以降、MLBカードは作れなくなった。これで松井さんとUD社との契約が終わり、TOPPS社から初のサインカードが登場した。TOPPS「Co Signers」に収録されたカードはコレクターの中でも一目置かれる存在になっている。

また、この2009年には本拠地ヤンキー・スタジアムが改修され、旧スタジアムのすぐそばに移転。旧スタジアムのフェンスを削ってはさみ込んだ歴史的なメモラビリアカードも制作され人気を集めた。

日本でファンやコレクターを楽しませていた「松井秀喜ホームランカード」も松井さんとともに海を渡った。日本テレビがUD社と提携して、ヤンキースでのホームランもカード制作。うれしいことに、日米通算本塁打数となり、カウントもつないだ。上述の本拠地開幕戦アーチも、通算333号として記載された。さらに、2009年からはUD社の撤退にともない、同年8月4日の通算460号カードから、日本テレビはTOPPS社との提携が変更になった。

「松井秀喜ホームランカード」が松井さんの現役生活での活躍とともに語り継がれるのは理由がある。松井さんは2010年はアナハイム(現ロサンゼルス)・エンゼルス、2011年はオークランド・アスレチックス(現アスレチックス)、ラストイヤーの2012年はタンパベイ・レイズでプレー。「ホームランカード」も松井さんを追いかけ、その3球団でのホームランをカードにした。エンゼルス、アスレチックスでのトレカは発行されているが、レイズでのトレカが作られていないため、貴重なレイズでのユニホーム姿がカードとして残っている。松井さんはレイズで通算507本塁打目を放ち、ユニホームを脱いだ。

現役引退後はしばらく、米国メーカーからトレカが作られいなかった松井さんだが、TOPPS社が日本進出をスタートさせ、「Japan Edition」や「NPB」商品を制作するようになってから、サインカードが収録されるようになり、オンデマンドカード「Topps NOW」では、大谷翔平投手(ロサンゼルス・ドジャース)が松井さんの本塁打記録を塗り替えた際には松井さんの現役時代の雄姿とのコンボカードを制作した。

「およそ1700の記憶」は今では「およそ1800の記憶」になったかもしれない。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。ボブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のボブルヘッドライター(自称)としてテレビ出演も。最近はトレカだけでなく、米国のリサイクルショップを回り、地元のアマ、プロチームの中古Tシャツ集めにはまっている。





























