東京五輪の柔道の金メダリストで、現役を引退したばかりのウルフアロンがプロレス転向を電撃発表。都内で会見を行い、新日本プロレスに入団することを明らかにした。
29歳のウルフは父親が米国出身、母親が日本出身。豊富なスタミナとパワーを生かした豪快な柔道で、五輪には東京大会とパリ大会に2大会連続で出場し、東京大会の男子100キロ級で金メダルを獲得した。柔道選手としては、6月8日に実業団の団体の大会で現役最後の試合を終えていた。
会見に臨んだウルフは「大学時代から録画したプロレスの試合を見るのが好きで、いつか柔道で思い残すことがなくなったらやれたらと思っていた。オリンピックで優勝するという最大の目標を達成し、パリ大会を最後と決めて挑んだ。やり残したことがなくなったので、憧れのプロレスの道に進む」と明かした。
「『なぜプロレスなのか』と聞かれたら、『好きだから』としか言えない」と「プロレス愛」を口にした。「オリンピックで優勝したのは柔道なので、そのプライドを捨てないといけない。プロレスではゼロからなので、1秒1秒をむだにすることなく、全力でやっていきたい」と話した。
会見には新日本プロレスの社長も務める棚橋弘至が同席。自身の引退試合が行われる来年1月の興行でウルフがデビューすることを明かした。「日本のアスリートでオリンピックの金メダリストが所属するのは初めてなので、業界を代表する選手になってほしい」と期待した。
柔道からプロレスへ転向した選手は数多い。全日本選手権13年連続保持の木村政彦、力道山とともに日本プロレスを創設した遠藤光吉、1965年世界選手権80キロ超級3位の坂口征二、84年世界選手権女子66キロ級3位の神取忍らがおり、武藤敬司、橋本真也、佐々木健介も柔道出身。日本のリングで活躍したアントン・ヘーシンク(オランダ)、ウィレム・ルスカ(オランダ)はメダリストだ。
柔道世界王者の新日本プロレス入りは、1997年デビューの小川直也以来となる。「柔道王」と呼ばれた小川は1992年バルセロナ五輪95キロ超級で銀メダルを獲得した。世界選手権で1987、89、91年と無差別級3連覇を果たすなど世界王者に4度、全日本王者に7度も輝いた、名実ともに世界トップの柔道家だった。アントニオ猪木と佐山聡が設立した「UFO」に入団し、1997年4月に新日本プロレスに参戦してプロレスデビュー。IWGP王者の橋本真也と東京ドームで対戦。試合前の予想を覆し、必殺技STO(スペース・トルネード・オガワ)を決め、裸絞めに落として勝利した。PRIDE、ゼロワン、ハッスルにも参戦した。
新日本プロレスのトレーディングカードはブシロードから定期的に発売されている。「レスラー・ウルフ」の初トレカはブシロードからが濃厚だが、年末年始のBBMのオールスポーツカードからの可能性もある。各スポーツの現役引退選手を集めたBBM「惜別」への収録は微妙になった。
畳の上からリングへ戦いの場を変える、ウルフがトレーディングカードでも、柔道からプロレスという新しいカテゴリーでも輝いて欲しい。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。ボブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のボブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。