アストロズからフリーエージェント（FA）になっていた菊池雄星投手がロサンゼルス・エンゼルスと3年総額6300万ドル（約97億円）で契約合意に達した。MLB公式サイトなど複数の米メディアが報じた。

菊池はNPB埼玉西武ライオンズ時代の2017年に16勝6敗、防御率1.97で、最多勝と最優秀防御率の2冠に輝くなど、8年間で通算73勝をマークし、2019年1月にポスティングシステムを使い、4年5600万ドル（約86億3000万円）でシアトル・マリナーズへ移籍した。2021年にオールスターゲームに選出されるなど実力を示すとそのオフにFAで3年3600万ドル（約55億5000万円）の契約でトロント・ブルージェイズと契約した。

今季は22試合に登板し、4勝9敗、防御率4.75も、トレード締め切りの7月のフラッグデールでポストシーズンに向けて先発左腕を探していたヒューストン・アストロズへ。移籍後はラスト登板で黒星を喫したが、登板試合でチームは負けない「不敗神話」を作り5勝1敗、防御率2.70をマークし、チームの地区優勝に貢献。アストロズからの残留要請もあったようだが、オフにFAとなった。

「（菊池が）アストロズに移籍して劇的に改善した理由はスライダーへの依存度が高まったこと。9月には、球種配分がフォーシームの36.6%に対してスライダーが38.9%を占めるようになり、2つの球種に相乗効果をもたらした」とMLB公式サイトも評価した。

エンゼルスは今季、シーズンワーストの99敗を喫するなど、10年連続でポストシーズン進出を逃してきた。オフにはチーム2位タイの6勝をあげたグリフィン・キャニング投手を交換要員に、2019年の本塁打王のホルヘ・ソレア外野手をブレーブスからトレードで獲得。FAで同じくブレーブスのトラビス・ダーノー捕手を2年1200万ドル（約18億5000万円）、ダイヤモンドバックスのユーティリティプレーヤーであるケビン・ニューマン内野手を1年275万ドル（約4億2000万円）で獲得するなど積極補強を続けている。

先発投手ではすでにカブスのカイル・ヘンドリックスと、1年250万ドル（約3億8500万円）で契約した。通算97勝のベテランとはいえ、契約年数は1年。実はエンゼルスは投手とは複数年契約を結ばないことで知られ、3年前に救援のライセル・イグレシアスと4年5800万ドル（約89億4000万円）の契約を結んで以来の大型契約で、先発では2年前のオフにタイラー・アンダーソンと3年3900万ドル（約60億円）で合意して以来2人目の複数年契約。今季はそのアンダーソンが10勝をあげ、チームの勝ち頭となったが2ケタ白星はただひとり。3年契約の菊池への期待の大きさがわかる。

エンゼルスでプレーする日本人選手は6人目。長谷川滋利投手を皮切りに、松井秀喜外野手、高橋尚成投手、田澤純一投手に続き、昨季まで大谷翔平投手が6年間、所属していた。

MLB公式サイトは「エンゼルスが、いまだに多くの日本人ファンをキープしているのは大谷が在籍した6年間のおかげだ」とした。本拠地エンゼルスタジアム周辺には日系人が多く住み、日本からの観光客も多い。エンゼルスが戦力として期待することにくわえ、観客動員や広告面などの収益も見込めると考えてもおかしくない。

日本人になじみのあるエンゼルス移籍で、菊池のトレーディングカードは日米で脚光を浴びそうだ。ネットオークションの「eBay」ではエンゼルスとの契約合意が明らかになった11月25日には26ものトレカ関連のアイテムが売買された。前日の24日には10アイテムしかなかった。今のところ、人気はマリナーズ時代の2019年のルーキーカードのようだ。

Cove（ライター）
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のボブルヘッドライター（自称）。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。