シリーズ 幻のトレカ⑧「松井秀喜 ホームランカード」【コラム/ブランド】

大谷翔平投手(ロサンゼルス・エンゼルス)が今季、日本人で初めてMLBで本塁打王(ア・リーグ)に輝いた。日本では郵便局のネットショップで「2023 AL ホームラン王獲得記念‼ 大谷翔平プレミアムフレーム切手セット」が発売された。シールタイプのフレーム切手(84円切手)5枚が1シートになっており、今季、大谷が放った1号、23号、30号、38号、44号が切手になっている。さらに、いろいろなおまけがつくのだが、44本のホームランデータ付ポストカードが44枚も含まれている。この画像を見て、思い出したのが、「松井秀喜 ホームランカード」である。

星稜高で高校通算60本塁打を記録した松井秀喜さんは、1992年のドラフト会議で中日、阪神、福岡ダイエー、そして、巨人が1位指名で競合。長嶋茂雄監督(当時)が単独交渉権の当たりくじを引き当ててサムアップ。 王貞治さんのシーズン本塁打記録55本にちなんで、背番号55を背負って、ジャイアンツのユニホームに袖を通した。

ルーキーイヤーの1993年5月1日、対ヤクルト戦(東京ドーム)の9回裏にで高津臣吾投手から記念すべきプロ初本塁打を放った。松井さんと言えば、絶えず、ホームランの期待を背負ってきた。そこで、制作されたのが「ホームランカード」だった。

松井さんがホームランを打つたびにカードが作られた。表面はホームランのシーンの写真、裏面はデータと松井さんのコメントが記載された。サイズは、一般的なトレカサイズよりひとまわり小さい、カルビーの「プロ野球チップス」サイズ。スタートは日本テレビ(現日テレ)の制作、「松井秀喜ホームランカード事務局」が窓口となった。

初本塁打から20年後の2013年、事務局がメンバーにあてた手紙によると、きっかけは宮崎キャンプでのフリー打撃で松井さんの打球だった、という。「世界のホームラン王になるまで、ホームランカードで松井選手を応援するという、世界でも類を見ない『松井秀喜ホームランカード』企画は産声をあげました」。

MLBのトレカで、ホームランの号数にこだわったカードはサブセットであったが、プロ初本塁打からカウントするカードはなかった。昨年、アーロン・ジャッジ外野手(ニューヨーク・ヤンキース)がア・リーグ新の62本塁打を記録した際にはTOPPS社のオンデマンドカード「TOPPS NOW」でカードが新記録が近づき、次々にカードが発行されたがこれもその短期間だけ。松井さんの「ホームランカード」はまさに世界初のトレカだった。

「ホームランカード」を入手するには、まず、事務局に住所と氏名などをメンバー登録する。ホームランカードと同じサイズの会員証が発行され、メンバーは月単位(のちに期間制に)で、「ホームランカード専用払い込み用紙」で、入金して、カードの到着を待つ、システムだった、と思う。

期待に応え、松井さんはホームランを量産した。レギュラーシーズンだけでなく、日本シリーズやオールスターゲームでの「ホームランカード」も作られた。1997年の1号、通算92号のカードから裏面は全面カラーになるなど、トレカとしても洗練されていった。

ところが、もう「ホームランカード」も制作中止になるに違いない、とファンやコレクターを心配させる事件が起きた。50本塁打をマークして3度目のキングとなった2002年、松井さんはオフにFA宣言して、MLBニューヨーク・ヤンキースへ移籍。巨人で通算332本塁打という記録を残して海を渡ったのだ。

それでも、日本テレビはファンの夢をつないだ。米国大手のトレーディングカードメーカー、UPPER DECK社と提携して、ヤンキースでのホームランもカード制作。うれしいことに、日米通算本塁打数となり、カウントもつないだ。2003年4月8日のヤンキースタジアムでの本拠地開幕戦で放ったグランドスラムのメジャー初本塁打が、333本目として記載された。

「ホームランカード」は米国のトレーディングカード史に残る事件さえも乗り越えた。2009年、TOPPS社がMLBとトレカ制作・販売に関する独占契約を締結。UPPER DECK社はこの年の「シリーズ2」の制作を断念し、以降、MLBカードは作れなくなった。だが、「ホームランカード」は制作を続行。同年8月4日の通算460号カードから、UPPER DECK社からTOPPS社に提携が変更になった。

松井さんは2010年にアナハイム・エンゼルス、11年にオークランド・アスレチックス、12年にタンパベイ・レイズに移籍したが、この3球団でも「ホームランカード」は続いた。2012年6月1日、ボルチモア・オリオールズ戦で、日米通算507本目の132メートルの特大アーチを放ち、ホームベースを踏んだ姿が「ホームランカード」の最後のレギュラーカードになった。

最初にメンバーに渡された会員証には「メンバーズ憲章」として「私たちは松井選手が869本のホームラン世界新記録を樹立するまで応援します」と記されている。NPB332本塁打、MLB175 本塁打を合わせて日米通算507本塁打。869本には届かなかったが、世界初の「ホームランカード」がファンやコレクターに与えた夢とカードを収集する喜びは、世界一だった。

Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。バブルヘッドのコレクションが自慢で日本唯一のバブルヘッドライター(自称)。トレカはレギュラカードのコンプリと日本人メジャーが中心。

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