【コラム】釜本邦茂さん死去―日本代表歴代最多75得点、伝説のストライカー

2025年8月10日、釜本邦茂さんが大阪府内の病院で肺炎のため亡くなった。プロ野球界の巨星・長嶋茂雄さんに次いで、日本サッカー界が生んだ歴代屈指のストライカーの逝去は、一つの時代の終焉を意味するような、本当に悲しい出来事だった。

1968年メキシコ五輪は私が12歳の時で、3位決定戦のメキシコ対日本の試合をモノクロのテレビ画面で、それこそかじりついて見た。杉山隆一さんの左からのセンタリングに、釜本邦茂さんが2ゴールを決め、横山謙三さんがメキシコのPKを止め、日本が2-0で勝ち銅メダルを獲得した。以来、釜本邦茂さんは私の中のヒーローの一人だった。

中学に進学して、迷わずサッカー部に入部するほどサッカーにハマった。しかし、1年生の2学期に転校したところ、その中学校にはサッカー部がなかった。それでもサッカーへの情熱はいささかも衰えなかった。大宮サッカー場に国際試合も見に行った。熊谷から大宮まで高崎線で約50分。大冒険だった。確か日本ユース代表とデンマークのアマチュアチームの試合だったが、球技場を出たら、68年のメキシコ五輪でキャプテンを務めたディフェンスの鎌田光夫さんがいた。ノートを出して初めてサインをもらった時の嬉しさは、興奮して夜も眠れないほどだった。
当時はトレーディングカードもなく、スマホもないためツーショットを気軽に撮ってもらうこともできない。色紙はあったが、最初から用意して持っていくことなどしなかった。ノートにサインを貰うことが、本当に当時最高の宝物だった。

それ以来、日本サッカーリーグも国際試合も随分と見に行った。ただ、中学・高校生で、しかも地方の少年にとってナマで試合を見に行く機会は少なかった。それでも釜本さんの美しいフォームから放たれる強烈なシュートは、まさに見る者のゴールへの願いを込めたようにネットを揺らした。特に右45度からのシュートは誰にも止められなかった。ヘディングシュートについても、落下点にいち早く入り、体の大きい外国人選手より高くジャンプするその姿は、強烈の一言だった。

1972年、ペレのいるブラジルの名門サントスFCが東京・国立競技場で日本代表と戦ったことがある。当時、高崎の高校に通っていた私は、腹痛と偽って早退し、友だちと初めて国立に行った。もちろんサッカーの神様・ペレ見たさからだったが、GK横山謙三さん、DF山口芳忠さん、MF森孝慈さん、そして釜本邦茂さんと、68年のメンバーも代表で活躍していたので、それも楽しみだった。
ちなみにペレさんにもサインをもらったことがある。確か渋谷のデパートの屋上で行われたイベントがあると聞いて、そこまで出かけた。今度はノートではなく、海外サッカー雑誌を切り抜き、それをパネルにしてサインをもらった。ずうっと実家の部屋に飾ってあったが、劣化してボロボロになったので処分したと聞いた時は、何とも悲しかった。結局、ペレのサインはそれ一枚だけだった。

話は逸れたが、釜本邦茂さんは京都・山城高から早大に進学し、大学時代に天皇杯も制覇。その後、ヤンマーで活躍した。日本サッカーリーグでは251試合に出場し、通算202ゴールを記録。得点王には7度輝いた。また、日本代表としても64年の東京五輪、68年のメキシコ五輪をはじめ活躍し、メキシコ五輪では得点王にも輝いた。国際Aマッチ76試合で歴代最多の75ゴールを記録している。身長180センチと恵まれた体格を持ち、シュートへの反復練習を含め、不断の努力を惜しまなかった選手だった。
早大時代には、大学から練習場のある東伏見まで電車に乗っている時も、席には座らずつま先立ちで通ったといい、また、お風呂でも浴槽の縁に座り、水の抵抗を利用して膝から下のキックを繰り返したと聞く。さらに、ヘディングの際に落下点に早く入れたのは、小さい頃に野球をやっていたため、ボールが落ちてくる場所を見極めるのが得意だったからだと聞いた。

釜本さんのトレカは、ベースボール・マガジン社やパニーニから、ヤンマー時代や日本代表時代のものが数は少ないが出ている。特に2020年に発売されたベースボール・マガジンの「INFINITY」の直筆サインカード、2016年の日本代表レジェンドの直筆サインカードは、今や入手困難かもしれない。
私は、日本サッカー協会80周年を記念してパニーニから発売された「歴代の勇者たちの足跡カード」の森孝慈さんと横山謙三さんのカードを持っているが、残念ながら釜本邦茂さんのカードは手に入らなかった。今、どんなカードでも釜本邦茂さんのものがあれば、日本屈指のストライカーの思い出として手に入れたい。

サッカーに夢中だった中学時代にトレーディングカードがあったなら、さぞかし嬉しかったと思う。素晴らしいプレー写真にサインをもらうことができたらと、今でも残念でならない。

 

文:Chief(ライター)
国内サッカーを中心にトレカの世界を長年に渡って見守って来た元スポーツ雑誌編集者。横浜F・マリノスサポーター。ラグビー、相撲にも造詣が深い。
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