欧米のトレーディングカードのカテゴリーのひとつとして人気があるのが、ステッカーである。好きな選手のステッカーを収集して、専用のアルバムに貼っていく。日本ではなかなか、定着しないステッカー収集だが、「ビックリマンチョコ」など希少な存在もある。その「ビックリマンチョコ」を現在も制作・販売している菓子メーカーのロッテが2006年に市場に送り込んだ、本格的なプロ野球のステッカーが「プロ野球シールガム」である。
トレカの定番サイズと同じ大きさのシールとコーラ味のガムをパックに封入。日本で最初に野球カードを菓子のおまけにつけたのはまだ戦前、1932年の「グリコ」だと言われている。戦後、最初に発行されたおまけカードは1948年の「浅山笛ガム」のカード。その後、1950年代にはキャラメルにカードをつける商品が多数、発売された後に、米国から遅れること約30年、日本でもガムのおまけとして野球カードが流行した。
1960年にマルト野球ガム、日本フードのスポーツガム、リリーガム、森下仁丹ガムの4種類が同時に駄菓子屋の店頭に並んだ。さらに、「森永トップスターガム」、カバヤが米国のリーフ社と提携した「リーフガム」とガムのおまけカードはカード史を紡いでいく。
ガムのプロ野球カードとして衝撃を与えているのがカネボウ「プロ野球ガム ゴールドカード(セ・リーグ版)」がある。このカネボウについては後日、紹介したい。
ロッテはチューインガムの製造販売からスタートした企業である。千葉ロッテマリーンズの親会社でもあるロッテが作った、ガムとシールを一緒にした商品はなかなかの出来だった。
NPB12球団から野手ひとり、投手ひとりの2選手ずつをピックアップした全24種類のシール。メーンの2枚の写真に、背番号やチームロゴ、マスコットのイラストなどがデザインされていた。裏面にはプロフィールとデータ、「シールで野球バトルゲーム」もついていた。
【2006 ロッテ プロ野球 シールガム】
千葉ロッテ 渡辺俊介、今江敏晃
福岡ソフトバンク 斉藤和巳、松中信彦
西武 松坂大輔、和田一浩
オリックス 吉井理人、谷佳知
日本ハム 金村暁、小笠原道大
東北楽天 岩隈久志、磯部公一
阪神 藤川球児、金本知憲
中日 岩瀬仁紀、福留孝介
横浜 三浦大輔、種田仁
東京ヤクルト 五十嵐亮太、古田敦也
巨人 上原浩治、阿部慎之助
広島東洋 黒田博樹、前田智徳
菓子メーカーがプロ野球関連の商品を作るとき、ネックになるのはライバルである菓子メーカー、ロッテの存在だ。ロッテの選手だけカードにしなかったり、セ・リーグの選手だけのカードになったりする。だが、「プロ野球シールガム」は12球団が対象。ただし、同年、ロッテでは千葉ロッテマリーンズのボビー・バレンタイン監督と選手を合わせた10種類のシールをおまけにした「マリーンズVICTORYシール」を発売。前年の2005年にパ・リーグ優勝、日本シリーズ制覇、アジアシリーズ優勝という快挙を受けてのものだったが、2006年は残念ながらレギュラーシーズン4位に終わっている。
翌2007年には「プロ野球シールガム 激闘スピリット 2007」として、発売された。シールと同梱されたガムはウォーターメロン(すいか)味に変わり、各球団の野手ひとり、投手ひとりに加え、前回も登場したアンコール選手ひとりの計3人。各選手のプレイシーンにそれぞれの特徴を表したキャッチコピーが配されていた。
10年以上前の商品で、今ではガムは食べることはできないが、シールは、ずれや剥がれもなく、ミント状態で現存。しっかりとした作りとなっている。
また、この年には「阪神タイガース応援シールガム」が発売されたが、ロッテではなく、フエガムで知られるコリスの商品だった。
残念ながら、「プロ野球シールガム」は2年間で終了。幻のステッカーとなった。
Cove(ライター)
元スポーツ紙ライター。国内外のコレクションアイテムを収集して30年あまり。トレカはレギュラーカードのコンプリと日本メジャーリーガーが中心。バブルヘッド収集も知られ、日本唯一のバブルヘッドライター(自称)を名乗っている。